免疫疾患横断セミナーシリーズ第4回

免疫疾患横断セミナーシリーズ第4回

プログラム

日本臨床免疫学会が、会員以外の方を対象に企画したセミナーです。
学会員も参加できます。研修認定単位1単位が取得できます。


Human Immunology Priming Seminar
~領域横断的に臨床免疫の本質を理解しよう~
2023年7月22日(土) 12:00-16:50
会場: 東京ステーションコンファレンス・サピアホール


様々な領域の免疫疾患のエキスパートが、臨床免疫の視点で俯瞰しつつ入門レベルから解説します。
まだ専門分野を決めていない、研修医・専攻医も歓迎です。


 開催形態
ハイブリッド(会場参加・ウエブ参加のいずれも可能)
 参加費
無料(学会員の単位認定料のみ有料)
 主 催
一般社団法人 日本臨床免疫学会
 ランチョン
 セミナー共催
ヤンセンファーマ株式会社
 イブニング
 セミナー共催
アッヴィ合同会社


参加申込は、締切いたしました。
お問合せは、事務局(jsci-hi@icongroup.co.jp)までお願いいたします。



12:00 - 12:50 ランチョンセミナー


 共 催 :
ヤンセンファーマ株式会社


免疫疾患におけるIL23の役割

 座 長 :
田村直人(順天堂大学 膠原病・リウマチ内科)
 演 者 :
久保智史(産業医科大学医学部 分子標的治療内科学講座)
多田弥生(帝京大学医学部 皮膚科学講座)


13:00 - 15:50 第4回免疫疾患横断セミナー


 司 会 :
藤尾 圭志(東京大学大学院医学系研究科内科学 アレルギー・リウマチ学)
松本 功(筑波大学医学医療系 膠原病リウマチアレルギー内科)


13:00-13:10 開会挨拶

 田中良哉(一般社団法人 日本臨床免疫学会 理事長)

13:10-13:45 リウマチ膠原病領域「分子の基礎的解析から治療薬へ、そしてその先へ」

 山岡 邦宏(北里大学医学部 膠原病・感染内科学)

13:45-14:20 皮膚科領域「皮膚疾患に対する免疫療法アップデート」

 福島 聡(熊本大学 皮膚科)

14:20-14:30 休憩

14:30-15:05 消化器内科領域「私が体験した炎症性腸疾患に対する抗インターロイキン-12/23 p40抗体製剤開発の基礎から臨床までの道のり」

 松岡 克善(東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科)

15:05-15:40 脳神経領域「神経免疫疾患における治療の現在」

 磯部 紀子(九州大学大学院医学研究院 神経内科学)

15:40-15:50 閉会挨拶



16:00 - 16:50 イブニングセミナー


 共催:アッヴィ合同会社


IBDにおけるJAK阻害薬

 座 長:岡本 隆一(東京医科歯科大学 消化器内科)
 演 者:久松 理一(杏林大学医学部 消化器内科学)



講師紹介


山岡 邦宏

山岡 邦宏

北里大学医学部
膠原病・感染内科学

膠原病領域の治療薬の進歩は関節リウマチで顕著であり、20年前の診察室の様相と現在では全く異なる。生体内で産生、発現する分子を標的とした様々な治療薬、分子標的治療薬が開発され、生活の質や生命予後が一般人口に近づきつつある。これらの成果は、皮膚疾患、悪性腫瘍、消化器疾患などの領域でも活かされ、現代の医療の中心は分子標的治療であると言える。ヒト免疫を理解することは容易でないが、分子標的治療薬の多くは免疫に関与する分子を標的としていることから基礎免疫の理解に基づいたヒトの多様性の理解は治療にあたって極めて重要である。基礎免疫学での知見に基づいて開発された薬剤の現在とこれからを議論することで臨床免疫学の魅力について議論してみたい。

福島 聡

福島 聡

熊本大学
皮膚科

「免疫でメラノーマを治す。」つい十数年前までは、そんなことを信じていたひとはごくわずかでした。いまや多くのがんで免疫チェックポイント阻害薬がファーストラインで使用されます。「尋常性乾癬は慢性の皮膚病だから命には関わらない。治らないので一生塗り薬を続けるしかない。」つい十数年前までこのように聞かされていた乾癬の患者さんに対しては、生物学的製剤が11種類使用され、PASIクリア(皮疹ゼロ)が現実的な目標になっています。あるベテランの皮膚科医はおっしゃいました。「自分が生きている間に、アトピー性皮膚炎がこんなに治る時代が来るとは思っていなかった。」皮膚は免疫臓器であり、多くの疾患において免疫学的治療が有効です。皮膚科領域における最近の進歩を臨床免疫の観点からサマリーします。

松岡 克善

松岡 克善

東邦大学医療センター佐倉病院
消化器内科

1990年代後半に抗TNF-α抗体が登場し、炎症性腸疾患や関節リウマチの治療体系を激変させました。それ以降、多くの分子標的薬がImmune-mediated inflammatory diseaseに対して臨床現場で用いられています。私は、炎症性腸疾患におけるInterleukin (IL)-12の研究を大学院時代に始め、米国留学中もその研究を続けました。帰国後は、臨床に軸足を移しましたが、抗IL-12/23 p40抗体の治験を通じてIL-12に携わり続けました。そして、2018年に抗IL-12/23 p40抗体は炎症性腸疾患に対して保険適用となり、現在患者さんの治療に日々用いています。このIL-12の基礎から臨床、そして実際の治療までを体験できたことは、臨床免疫に携わっている者として非常に幸せなことでした。若い先生方も自分の研究が将来の患者さんの診療に応用されることをモチベーションに研究を頑張ってほしいと思います。

磯部 紀子

磯部 紀子

九州大学大学院医学研究院
神経内科学

神経免疫疾患の分野では、現在、分子標的薬等の様々な疾患修飾薬が使用可能になり、治療のアルゴリズムも大きく変わりつつあります。ゲノム解析、フローサイトメトリーを用いた免疫学的研究やモデル動物を用いた研究等により、病態の理解が進み、より各疾患の病態メカニズムに則した治療が展開できるようになったためです。しかし、同一疾患においても患者さんごとに多様な病態を呈することも多く、それぞれの病態に応じて治療の主軸を整える個別化医療を充実させる必要性が、今後益々高まることが予想されます。今回、各神経免疫疾患における病態とその治療の現状、そして、神経免疫疾患の診療の充実に向け、今後必要となるアプローチについてお伝えし、ディスカッションできればと思います。

共催セミナー抄録:ランチョンセミナー


久保 智史

産業医科大学医学部
分子標的治療内科学講座

関節炎におけるサイトカインの役割とその阻害
関節炎を来す代表的な自己免疫疾患として関節リウマチと乾癬性関節炎があり、いずれもサイトカインを標的とした分子標的治療薬が奏効する。これらの標的薬はいずれも基礎的検討から臨床試験までのシームレスな研究の成果と言える。逆に臨床試験の結果やそれに付随した基礎的解析は、マウスモデルを中心とした免疫学からヒト免疫疾患の解明へと結びつく。このようなベンチとベッドのクロストークが臨床免疫学の核であり、我々が常に目指しているものである。先の2疾患においては、関節リウマチではTNF、IL-6が主な標的サイトカインであるのに対して、乾癬性関節炎ではTNF、IL-17、IL-12およびIL-23が標的となっており、その病態は同じ関節破壊を来す病気でも明らかに異なっている。本セミナーでは我々の検討とともにIL-23を中心にヒト免疫疾患におけるサイトカインの役割とその阻害を概説する。

多田 弥生

帝京大学医学部
皮膚科学講座

皮膚免疫疾患におけるIL-23の役割
特定の治療が効果を示すことによって、疾患の病態解明につながることがあるが、近年そうした経緯で理解が大きく進んだ皮膚疾患に乾癬、掌蹠膿疱症がある。乾癬は、重要なサイトカイン(TNF、IL-17、IL-23)の数が限られているため、これらを阻害すると皮膚症状や関節炎に非常に高い効果を認める。一方、掌蹠膿疱症も乾癬の類縁疾患であるため、同様のサイトカインが重要かと思われていたが、生物学的製剤の効果からIL-23が特に病体に重要なサイトカインであることがわかってきた。本講演においては、乾癬と掌蹠膿疱症の免疫学的病態におけるIL-23の重要性についてお話ししたい。


共催セミナー抄録:イブニングセミナー


久松 理一

杏林大学
消化器内科

IBDにおけるJAK阻害薬

炎症性腸疾患の薬物治療は5-ASA製剤、副腎皮質ステロイド、チオプリン製剤などが主体であったが、2002年クローン病に対するインフリキシマブの適応承認を契機に抗体製剤による分子標的治療の開発が目覚ましい勢いで進んだ。そして、2018年、既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対してJAK阻害薬であるトファシチニブが初の経口低分子化合物として承認された。現在、潰瘍性大腸炎に対してはトファシチニブ、フィルゴチニブ、ウパダシチニブの3剤が承認されている。これら3剤でJAKに対する選択性は異なっており、それぞれの有効性・安全性はプラセボ対象二重盲検ランダム化比較試験で報告された。総合的にJAK阻害薬の有効性発現は早く即効性が期待されている。JAK阻害薬における最も重要な課題は安全性であり、関節リウマチと潰瘍性大腸炎との間の違い、患者背景によるリスクの違い、そして人種による違いを理解する必要がある。また長期安全性に関するエビデンスも必要である。本セッションでは、潰瘍性大腸炎に対するJAK阻害薬3剤の試験成績を概説し、特に安全性について議論を深めたい。



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